お金の話

住宅ローンに「残価設定型」が登場か?メリットとデメリットを考察

毎月の返済負担を軽くする新たな住宅ローンの開発に官民が乗り出す。国土交通省は住宅購入時の借入額と将来的な住宅価値の差額のみを返済する「残価設定型」のローンの普及に向け、2021年度にも民間の金融機関が参加するモデル事業を始める。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64820120Z01C20A0EE8000/?n_cid=SNSTW005

何やら、"残価設定型の住宅ローン"を普及させたい動きが国のほうであるようですね。
残価設定ローン、通称「残クレ」は確かに毎月の支払額を抑えることができますが、必ずしもメリットだけではありません。

そこで今回は住宅ローンを残クレにすることのメリットとデメリット、さらにそもそも残クレとは何なのかについて考察を加えながら解説していきたいと思います。

残価設定ローン「残クレ」とは?

そもそも残価設定ローン、通称「残クレ」とは何なのでしょうか?
残クレを理解するためには、まず「残価」というものが何なのかを理解する必要があります。

残価とは

残価とは「将来の価値」のことです。既に残クレが浸透しているカーローンのケースで考えてみましょう。

こちら、私が現在欲しいなぁ~~と思っているHondaのN-VANです。いろいろ装備を乗せて総額が1,911,080円となりました。
これを通常の5年ローン(60回払い)で購入すると、頭金を115,880円入れて3.5%の金利が乗って、月々の支払額が32,600円となります。

一方、同条件のN-VANを残クレで購入すると、頭金や金利の条件は一緒なのに月々の支払額は24,300円になりました。
両者の月々の差額である8,300円はどこへ消えたの…?という疑問の答えが、画像右下あたりの"最終回お支払い総額"にあります。

ここに記載されている"571,200円"というのは、ホンダの信販会社であるホンダファイナンスが統計やら市場調査やらから導き出されるフクザツカイキな計算によって算出された「N-VANの5年後の市場価値」ということになります。つまり、これが「残価」です。

残価を「設定」する

ホンダファイナンスはN-VANの5年後の市場価値が少なくとも571,200円以上であると自信を持っています。
そこで、N-VANを購入しようか迷っている人に対して、

1,911,080円から571,200円を引いた1,339,880円だけとりあえず払ってくれればエエで

と提案するワケですね。(正確には違いますが)
このように購入時に予め「将来の価値=残価」を「設定」してローンを組む…だから"残価設定ローン"というワケですね。

残クレの特徴:期間後の残価の取り扱いについて

「え?残価は支払わなくていいの?ラッキ~!」

いやいやそんなことあるワケありません。残価を支払わなくていいのは信販会社に車両を返却する場合のみです。
信販会社も商売ですから、返却してもらった車両を中古市場で捌いて571,200円をペイしなくてはいけません。

571,200円が"乗り続ける"の場合であるということが示すように、その車の負債を全額返済し晴れて自分の所有物にしたいと思うのであれば、5年後に571,200円を支払わなくてはなりません。
この場合、一括で返済するか、571,200円のローンを新たに組むかを選ぶことになります。

残クレのメリットと意義について

残クレのメリットはズバリ「月々の返済額が抑えられること」です。
上の例で行くと、「月3万超えはちょっと…」という人も、月2万5千円を切れば「これないけるかな…?」と思いますよね。

一方で残クレの意義について考えてみましょう。仮にその車を乗り続けるために残価部分で再びローンを組むとしたら、それは通常のローンと変わらないどころか残クレのほうが総支払額が高くなってしまいます。(残価にも利息が付くため)
総支払額が高くなるということは、全期間で均してしまえば月々の返済額はむしろ高くなっていた…なんてことになりかねません。

残クレを賢く利用するためにはローン期間終了後に残価で引き取ってもらうという選択をするより他ありません。

住宅ローンの残クレについて

以上を踏まえて住宅ローンに残クレが登場した場合どうなるのかを考えていきましょう。

問題点1 : 残価はどうやって決まるのか

ホンダファイナンスはN-VANの残価を統計や市場調査によって計算しました。これが計算できるのは、「中古車市場」というものがある程度の規模と流動性を持っているからです。
買いたい人と売りたい人がたくさん居て、なおかつ品物が多く流通していれば、値段は需給関係で自然に定まります。一方で流通量の少ない一品物や、市場規模の小さい品物は値段のつけようがありません。もし私が粘土で素晴らしい造形物を作って1,000万円の値段を付けて売りに出したところで、1,000万円が適正な値段かどうかは誰にも知りようがありませんし、ましてや売れることは無いでしょう。

そして中古住宅は市場規模の小さい一品物という分類に入ります。
住宅の経年による資産価値の減少は誰もが知るところですから、住宅を中古で売ろうとしても二束三文の値が付けられてしまいます。その一方で住宅を欲しがる層の価値観は「理想の新築」に傾いていますから、市場に出てきた中古住宅は売れそうにありません。これでは市場が活性化するはずもありません。

従って、おそらく10年以上先である未来の「住宅の市場価値」を残価として設定するということは困難であることが予想されます。
実際、この制度を普及させるため"将来の住宅価値を評価する手法の研究費用"として、国が助成金を出す手筈となっています。

問題点2 : 残価を払わないことを選択できるのか

残クレは残価を支払わないからこそ意味があるというお話をしました。しかし、住宅ローンの残クレにおいて残価を支払わないという選択を取れるかかどうかが疑問です。

車における残クレで、残価を支払わないと決めたあとの選択肢は2つあります。

  1. 新車に乗り換える
  2. 車を返却する

つまり、新しく車を購入するか、そもそも車を不要とするかのどちらかということです。
車を必要とする限り、車検前に残クレで新車に次々と乗り換えていくという選択肢は悪くないと思います。また、車が不要になるというのも無い話ではありません。

一方で住宅の場合はどうでしょうか。新築に次々と住み替えていくというのは想像し難い話ですし、衣食住の一つである住宅が不要になることはまずありません。
残価を支払わずに住宅を手放すシチュエーションとしては、例えば子育てが終わると同時にマンションや平屋、あるいは賃貸などに居を移す場合などが考えられます。
しかし10年、20年と暮らした場所に対して、そのようなドライな態度を取れるかどうかは甚だ疑問です。私は無理だと思います。

住宅ローンの残クレに対して私達ができること

簡単に述べてみましたが、この話自体もやる予定だよ~!という段階であり、上手くいくかどうか、そもそも市場が受け入れるかどうか、いやいやそれ以前に本当にやるかどうかさえわかりません。

しかし国がやると言っている以上、備えておいたほうが良いに決まっています。投資格言にもある「国政には逆らうな」です。上手く乗っかって得をしてこそ国民です。

資産価値が長く続く家にしよう

この制度を普及させるためには、金融機関が住宅の将来価値を正確に測れるようになることが必須です。
私達にできることは、そうなったときのために資産価値が将来に渡り長く続く家を建てることです。

資産価値が長く続く家の条件は今後の研究によって変わる可能性が大いにありますが、現時点で信頼に足るであろう条件を2つあげるとすれば「長期優良住宅」と「ブランド力」です。

長期優良住宅について

長期優良住宅はかなり前から国が推進している事業です。もし住宅ローンの残クレが始まれば、長期優良住宅は必須条件あるいは優遇条件になると思われます。
大事なことは、住宅ローンを残クレで借りようと思っていない人も、長期優良住宅にすることで制度のメリットを享受できるという点です。もし制度が普及すれば中古住宅の市場は活性化し、中古住宅の価値は上昇します。何かしらの理由で自宅を売却することになったとき、長期優良住宅の認定を受けていれば認定を受けていない住宅よりも高い価格で売ることができるでしょう。

ちなみに長期優良住宅ってな~に?という方は↓コチラ↓

参考新築住宅の固定資産税について【決め方・調査方法など】

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ブランド力について

人がブランドに対して持つイメージというのは時間をかけて醸成されてきたものであり、そう簡単に変わりません。
どこが優れているのか分かっていなそうな人も、鞄からルイ・ヴィトンの財布を取り出しますし、Android端末と機能面を比較検討してからiPhoneを購入するのは、全iPhoneユーザーの半分にも満たないでしょう。
それにも関わらずこれらのブランド製品は人気を集めており、だからこそ中古市場でも高値で取引されています。

市場で買ったり売ったりするのが人間である以上、信頼できる製品であったり、誰もが知っている名前であったりすることはそれだけで価値を持ちます
従って、新築住宅を建てるときもブランド力を持つハウスメーカーを選ぶほうが初期費用は高いが結果的に得をする、ということになるかもしれません。

備えあれば憂い無し!新しい時代に備えよう

というわけで残価設定型の住宅ローンについての考察でした。
この制度については否定的な意見が多く見られますし、この記事でも考えられうる問題点を取り上げました。ではこの制度は悪いのか?というと、そうではありません。

最終的に住宅ローンを残クレにするかどうか決定するのは、ローンを組む私達消費者であることは疑いようがありません。従って、仕組みやメリット・デメリットを理解し、自らの得になると判断できるのであればそれは"良い制度"ですし、逆も然りです。

今回の残クレに限らず、お金に関することに対しては一度周りの雑音を全てシャットアウトした上で、自分で計算機を叩いてみることをオススメします。

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