家づくりのヒント

ハイコスト住宅の利点について【私達は何を買っているのか】

どうも皆さんこんにちは。SPSマンです。
突然ですが、セキスイハイムを始めとするハイコスト住宅」の利点ってなんでしょうか?

知っての通り、セキスイハイムの住宅は決して安くはありません。
安くないのは広告費が高いからだとか自由設計だからだとか、色々な考察がありますがひとまず置いておいて、建設的な話として安くない住宅から私たちが得られるメリットは何なのでしょうか?
もっと言えば、そのメリットは費用対効果で考えた時、割りに合っているのでしょうか?

本記事はそんな疑問を、

  • 仮にローコスト住宅で建てた場合の差額
  • 生涯的に発生するコストの比較
  • 心と健康

という観点から考察するものです。

ハイコスト住宅・ローコスト住宅それぞれのメリット・デメリット

まずはローコスト住宅のメリット・デメリットを見ていきましょう。

ローコスト住宅のメリット

  • とにかく安い

身も蓋もない話ですがコレに尽きます。
お金が無尽蔵にあれば、誰だって好きなだけお金を使って好きなように家を建てると思います。
が、現実はそうではなく予算や住宅ローンなど、比較的面白くない問題と向き合っていかなければなりません。
面白くない問題と向き合ったとき、その問題を少しでも簡単にする方法が「ローコスト住宅を選ぶ」という選択肢なんですね。

例えば月々の住宅ローン返済が15万円の場合と10万円の場合とでは、収入が一定であるとすれば後者のほうが頭痛に悩まされる可能性は低いでしょう。
さらに借入額が少ないということは、将来的に一括返済しやすいと捉えることもできます。

人生の三大資金と言われる「住宅取得資金」、これが"安い"ということは大きなメリットです。

ローコスト住宅のデメリット

  • 間取りが画一的である

ローコスト住宅は間取りを画一化することで建築資材を規格化・大量生産可能にし、建築にかかる費用を抑えることでローコストを実現しています。
従って間取りは提示されたプランあるいは複数プランの組み合わせから作ることになり、ハマらない人はどうやってもハマらない、という欠点があります。

  • 設備グレードが低い

ローコストですので相応の設備が標準仕様になっているはずです。
それで良い場合は問題無いのですが、もし「トイレだけはこだわりたい!」と思ったとしても、設備メーカーとの取引実績が多くない住宅メーカーの場合、かかる費用が割高になってしまう可能性があります。

参考【掛け率】セキスイハイムはLIXILの設備を何割引きで仕入れているのか?

続きを見る

  • 性能が低い

ハイコスト住宅と比べると家の性能が低いのは仕方がありません。
ここでいう"性能"とは「気密性」「断熱性」「遮音性」「耐久性」などのことです。
もちろん、これらはハイコスト住宅に比べて劣っていますが、家を建てることを商いとしている以上、建築基準法に則った家としての基準を満たした作りにはなっています。

ハイコスト住宅のメリット・デメリット

簡単に言ってしまえば、ローコスト住宅のメリット・デメリットを逆にした、ということになります。

つまり、メリットは「自由設計」「高級設備」「高断熱・高気密」etc…ということですね。
一方デメリットは「価格が高い」、これに尽きるというワケです。

大手ハウスメーカーが語る「ライフサイクルコスト」への懐疑

ローコスト住宅・ハイコスト住宅それぞれのメリット・デメリットについて分かったところで、私達施主にとって直近の問題である「価格」について少し掘り下げていきましょう。

セキスイハイムを始め、ハイコスト住宅を売る大手ハウスメーカーの展示場へ足を運び、「価格」の話をすると必ず言われるセリフがあります。

ライフサイクルコストで考えれば、ローコスト住宅よりも費用が抑えられますよ!」

ライフサイクルコスト(LCC)とは?

ライフサイクルコスト(Life cycle cost)とは、製品や構造物などの費用を、調達・製造~使用~廃棄の段階をトータルして考えたもの。訳語として生涯費用ともよばれ、英語の頭文字からLCCと略す。

製品や構造物などの企画、設計に始まり、竣工、運用を経て、修繕、耐用年数の経過により解体処分するまでを建物の生涯と定義して、その全期間に要する費用を意味する。建物以外には土木構造物(橋梁、舗装、トンネル)等にも適用されている。

費用対効果を推し量るうえでも重要な基礎となり.初期建設費であるイニシャルコストと、エネルギー費、保全費、改修、更新費などのランニングコストにより構成される。

ライフサイクルコストの低減を図るには、企画・計画段階から全費用を総合的に検討することが必要といわれる。

製品や構造物等を低価格で調達、製造することが出来たとしても、それを使用する期間中におけるメンテナンス(保守・管理)、保険料、長期的な利払い、廃棄時の費用までも考慮しないと、総合的にみて高い費用となることから生まれた発想。イニシャルコストのみならず、ランニングコストを含めた総合的な費用の把握は、近年における経営意思決定の常識となっている。

ウィキペディアより

要するにライフサイクルコストとは、イニシャルコスト(初期費用)とランニングコスト(維持費用等)とを足し算した、ものごとの始まりから終わりまでにかかる総費用のことです。

家であれば、イニシャルコストは「建築費用」「購入費用(建売)」、ランニングコストとは「電気代」「外壁塗装費用」「リフォーム費用」などが該当します。

LCCの妥当性について

確かに言っていることは一理あります。
住宅ローンなどの利子が付く借り入れをするとき月々の支払額だけではなく、必ず総返済額を確認しなければならないのと同じように、家にかかる費用も「維持費」まで勘定しておくことは大事でしょう。

しかしながら「費用が抑えられる」という点についてはいささか疑問が残ります。

SPSマン
それって…そう言わないとローコスト住宅に勝てないからじゃないの!?
参考【簡単説明】ZEHとは?ZEH住宅に住んでみての感想とZEHの必要性について

続きを見る

例としてZEHを考えてみましょう。
ZEHとはその名の通りゼロエネルギーハウスを意味し、年間のエネルギー収支がゼロになるような住宅のことを指します。
従ってランニングコストの一つである「電気代」は、少なくともZEHを満たさない住宅よりも安くならないと意味がありません
しかし一方で、ZEHを推進している国自身が、「ZEH住宅・設備は割高である」と認めています。

これらを踏まえると、「結局LCCで考えてもローコスト住宅のほうが安いんじゃないか?」という懸念が湧き上がってきます。

セキスイハイムより

セキスイハイムによるとLCCは「光熱費」「メンテナンス費」「リフォーム費」「大きな修繕費」に分類されるそうです。
このうち「大きな修繕費」は、保険によって賄える可能性があるのはローコスト住宅も同じなので除外。
さらに「リフォーム費」のうち水回り設備はグレードによる"耐久性の違い"をあまり感じなかった(私だけ?)ので除外。

このようにハイコスト住宅とローコスト住宅を比較し、LCCに与える影響に差があまりないと考えられるものを除外していくと、結局残るのは断熱性・気密性に関わる要素(=光熱費に影響)、外壁、屋根、発電・蓄電設備くらいにな気がします。
「大手ハウスメーカーは剥離しにくい最高級の壁紙のりを使っている!」とか「大手ハウスメーカーが使うパッキンは次世代素材でカビが生えにくい!」とか、もしかしたら私の知らない要素があるかもしれませんが。

もし我が家の坪単価が40万円だったら

参考【坪単価】セキスイハイムスマートパワーステーションFRの価格は?【19-20年度】

続きを見る

我が家、セキスイハイムのスマートパワーステーションFRの坪単価は約85万円で、建築費用は約3,200万円でした。
もろもろの条件を踏まえ、セキスイハイムのスマートパワーステーションFRの一般的な坪単価は72万円からである、と当ブログでは結論づけています。

参考セキスイハイムの坪単価を下げる方法を考えてみた

続きを見る

延床面積が約38.5坪ですので、坪単価が72万円なら建築費用は約2,800万円です。
一方、もしこれがローコスト住宅だったとすると、仮に坪単価が40万円なら建築費用は約1,600万円となります。

両者の差額は実に1,200万円です。
従って、「ハイコスト住宅にしたことで削減されるLCCが1,200万円以上」でないと、大手ハウスメーカーの言葉はウソであるということになってしまいます。

「1,200万円以上のLCC削減効果を見込めるのか」判断する方法があるのか?

では1,200万円以上のLCC削減効果が本当にあるのか、どうやって判断すればいいでしょうか。
パッと思いつくのは、維持費としてかかるものをすべて列挙し足し算していく方法です。
つまり、断熱性・気密性に関わる要素、外壁、屋根、発電・蓄電設備にかかった費用あるいは差額の総和を調べれば良いわけです。
しかし差額が数字でしっかりと分かるものもあれば、そうでないものもあります。
また維持費を計上する期間としてどれくらいが適当であるのか定義が難しいといった問題もあります。

例.タイル外壁

例えばセキスイハイムでは60年間メンテナンスフリーであるというタイル外壁を選ぶこともできます。

参考セキスイハイムの外壁の種類と選び方【性能・価格・特徴】

続きを見る

例えば最も低価格(金額によるタイル外壁の性能の差異は無い)であるラスティックタイルは、40坪なら標準仕様のサイディング外壁との差額は約110万円です。
サイディング外壁は再塗装の費用として80万円/15年がかかることが分かっており、60年後の総費用は320万円です。
つまり初期費用110万円を投じてタイル外壁を採用することで、60年間で210万円のLCC削減効果を期待できる…と言えます。

例.電気代

電気代がお得になるというのは使いやすい営業方法のようで、良く耳にします。

参考【オール電化の電気代】セキスイハイムの光熱費は…?【20年6~7月】

続きを見る

当ブログでもスマートパワーステーションFRの電気代を、アパート時代にかかっていた電気代と比較しながら紹介しています。
これによると月々1万円程度は電気代が安くなっていると言えます。1年間で言うと約12万円ですね。

アパートと戸建てでは条件が違いますが、住んでいたアパートよりもセキスイハイムのスマートパワーステーションFRのほうが性能が優れていることは事実でしょうし、電気代がお得になるというのは本当です。
ですがLCCで見たときに、電気代をお得にするために採用した設備(エコキュート・ソーラーパネル・トリプルガラス窓・ZEH仕様水栓etc)にかかった費用を計上すると年間12万円のコスト削減で割に合うのかというのは疑問です。消耗による買い換えなども考えなければいけませんからね。

住宅のどの部分がどれだけのLCC削減効果を持っているのかというのは、おそらく専門知識を持った人がZEH関連の書類である「BELS評価書」を見れば分かるのかもしれませんが、私のような素人が見てもちんぷんかんぷんでした。

良い家を建てることはLCC削減につながらない?

LCCは不確定な未来予測を始め、要素が多すぎて計算が困難です。
ですが仮に60年間というスパンで考えた場合でも、この例のように1,200万円の差額をペイするのは難しいと思います。
大きな理由としては、

  1. LCC削減効果を持つ高性能設備は、まだ割高である
  2. さらに経年劣化による交換も考慮しなければならない
  3. これらの設備は多くの場合、ローンにて購入されている(設置費用に金利分が上乗せされる)

このあたりが挙げられます。

性能の良い家を手に入れるために資金を投入することを「投資」として捉えるのであれば、元金を回収するのは難しいか、かなりの期間を要するだろうというのがここまでの結論です。

私達は何を買っているのか?【EBとNEB】

それでは高額なローンを組んでまで性能の良い家を買うことは割に合わない愚かな選択なのでしょうか?
この辺りの話は非常にセンシティブな問題であり、個々人のライフスタイルが強く影響するところでもありますので、間違っている間違っていないと決めることができません。
従って様々な角度・見方で考える必要があるのですが、考え方の一つとして慶應義塾大学・近畿大学の研究チームによる面白い研究を見つけましたのでご紹介します。

健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価

この研究は先ほどまで論じてきた「性能の良い家を買って、果たして元がとれるのか?」という疑問を解決しようとするもので、性能の良い家を買うことによるメリットを2つの要素に分けて考えています。
この2つの要素というのがEB(Energy Benefit)とNEB(Non-Energy Benefit)です。

EB(Energy Benefit)とNEB(Non-Energy Benefit)とは?

まずEBとは「直接的便益」のことです。
住宅を高気密・高断熱にする、すなわち省エネルギー化することで得られる直接的便益とは、先ほども取り上げた「電気代」などの光熱費削減効果を指します。
このEBだけでは住宅を省エネルギー化にするためのコスト(初期投資額)が割りに合わないというのはお話ししたとおりです。
現にこの研究においても、住宅を省エネルギー化するためにかかったコストを100万円とした場合、元金を回収するためには29年かかるという結論が出ています。

一方NEBとは「間接的便益」のことです。
住宅を高気密・高断熱にすることにより室内の環境は快適になるはずです。すると、気密性や断熱性の低さに起因する病気の発生が少なくなると考えられます。
すなわち、住宅を省エネルギー化することで病気になってしまったときの治療費や休業による所得損失などを軽減できる、と考えることができ、これをNEBと定義しています。

「暖かく快適な家に住みたい」というのは誰もが思うところですが、実はその思いのウラには「健康な人生を送りたい」という欲求が隠れています。
が、普通はそんな無意識のところまで考えません。「トリプルガラスにしたことでC値が○○c㎡/㎡改善されたから、年間の医療費が△△円軽減されそうだなぁ」なんて誰も考えませんよね。

しかしこの研究は、EBはもちろんNEBまでも具体的に金額換算し、初期投資額に対する投資回収年数を計算しています。
つまり、NEBまで考慮した場合の投資回収年数とEBのみで考慮した投資回収年数とを比較することにより、NEBがLCCにどれくらい寄与するのかが分かり、ひいては住宅にコストをかけることの価値が分かる、ということになります。

NEBの妥当性について

研究チームは戸建住宅への転居経験者を対象に、転居前後における有病状況の変化を問う全国的なアンケートを実施しました。
このアンケートから選定された10,527人を分析対象として、住宅の気密・断熱性能が有病状況にどう変化を与えるか調べたところ、アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息などを始めとする10種類の疾病について改善傾向があることが明らかになりました。

NEBまで含めると投資回収年数が13年減少する

住宅の気密性・断熱性を向上させると疾病が改善される、つまり家計における医療費や休業した場合の損失などが浮くワケですが、問題はどれくらいの"費用対効果"が得られるか、ですよね。

先ほど住宅を省エネルギー化するために100万円をかけると、EBだけで計算すると元金を回収するために29年かかるというお話をしました。
これに対し、健康維持がもたらすNEBを考慮すると、元金を回収するための期間はなんと16年に短縮されるそうです。

この計算はあくまでも家計における便益を考えたものであり、ここからさらに医療費の自己負担分以外の社会的な負担も加味した場合、元金を回収するための期間は11年まで短縮可能であることが示されました。
社会保障に頼らないようにすることで、巡り巡って税金が安くなる…みたいなイメージですね。

具体的な数値でいくと、100万円をかけて住宅を省エネルギー化することで得られるEBが35,000円/年である場合、中所得者世帯のNEBは47,000円/年と算出されます。
つまり、NEBまで考慮すると年間84,000円が浮くことになる…というワケです。

数値化できない「苦しみ」を考える

このようにNEBという観点を加えることにより、住宅を高性能にするために資金を投じることは単なる自己満足ではなく、社会経済的にも意味を持つということが分かりました。
しかしながらこの研究が住宅を省エネルギー化するためにかけたコストはあくまで100万円です。
例えば我が家が高性能住宅を手に入れるために払ったローコスト住宅との差額1,200万円は、単純計算で投資回収年数192年!!とはならないでしょうが、少なくとも16年で回収できるとは思えません。

そこで、NEBの発想をもう少し掘り下げてみましょう。
NEBは「病気にならずに済むから医療費が抑えられるよ」「仕事を休まないで済むよ」という"金銭的な便益"を数値化したものでした。
一方で、病気になることによる"痛み"や、失業することによる"不安"など、数値化することが不可能である人間の「苦しみ」を未然に防ぐ働きがある、と捉えることもできます。

つまり「苦しみ」を防ぐためには健康である必要があり、統計的に高性能住宅を買うことは健康に一定の効果があり、従ってハイコスト住宅の利点は「心の安寧」である、と言えるワケです。
なんだか宗教じみてますが、それなりに納得の行く話ではあると思います。心の安寧、すなわち「安心」ですからね。

まとめ

ハイコスト住宅の利点としてよく挙げられる「省エネルギー性」、つまりEBだけでは「かけたお金に対して効果があまり感じられない」というのが正直なところでした。
しかしNEBでいう観点から考えることにより省エネルギー性は健康の維持につながることが分かり、医療費や休業時損失の軽減社会保障の負担減、さらには「安心な暮らし」を手に入れられることが、ハイコスト住宅の本当の利点であることが分かりました。

もちろん、これは考え方の一つでしかありません。
しかし「なぜ高いのか?」「安くする方法は無いのか?」という話はよく目にする割に、「お金を払うことにより何を手に入れられるのか」という便益に着目した話があまり無かったので、今回の記事を書いてみました。
ローコスト住宅だって「安い」という唯一無二の利点があります。しかし価格だけを見て安易にローコスト住宅に流れるのではなく、様々な角度から「自分に最適な家」を探してみてください。

-家づくりのヒント

© 2023 セキスイハイムSPSでスマート生活!